オフサイドはサッカーにおける反則の中でも、最もジャッジが難しいものと思われている方も多いことかと思う。審判にとって難しいだけでなく、選手も理解しきれていないのではないか。
オフサイド判定時に、選手が明らかにオフサイドポジション居れば、誰もが納得出来る。ところが多くの場合は、体の一部がオフサイドポジションだったかどうかで笛が吹かれているのだ。それ以外にも、オフサイドは数センチまたは数ミリ単位の微妙なジャッジが求められることが多々ある。
オフサイドルールは1863年に制定され、何度も細かなルール改正が行われている。現在のルールにおいて注意すべき点を見てみよう。
オフサイドのジャッジはなぜ難しいのか?
パスを受けた選手がオフサイドポジションにいたかどうかで、オフサイドか否か決まる。その位置がはっきりとしている場合であっても、微妙な場合であっても、最終的には主審が判断を下す。近年は、VARの導入でより正確な判断が下されるようになった。
一方で、VARを用いても確実な判定ができないケースがある。オフサイドだけではないが、反則の対象となるプレーが意図的なものであったかどうかの判断だ。ハンドの反則をイメージしてもらうとわかりやすい。たとえ手に当たっていたとしても、必ずしも反則になる訳ではない。それが意図的に行われたプレーだったかどうかが、反則を判定する基準となる。ハンドに関してはその曖昧さを解消する為に、2019年のルール改正でどのように手に当たったら反則になるのかが、これまで以上に明確に示された。
オフサイドはどうだろう。実はオフサイドにも、意図的なプレーであったかどうかを判定基準にするシーンが存在する。
相手選手からのパスはオフサイドになる?ならない?
2020年2月に、Jリーグにおける判定基準となる「2020 レフェリングスタンダード」が公開された。
そこでオフサイドに関しても言及されている。オフサイドポジションにいる選手にパスが渡る前に、ボールが相手選手に当たっていた場合に、オフサイドになるかどうかについてだ。
結論は、オフサイドになる場合もあれば、ならない場合もある。判定を分けるのは、先述した「意図的なプレーかどうか」だ。守備側の選手が意図的なプレーでボールに触れた結果、攻撃側の選手に渡ったのであればオフサイドにはならない。同じシーンでも、守備側の選手が意図せずにボールに触れていた場合は、オフサイドとなる。
さらにレフェリングスタンダードでは、ボールに触れていない選手のプレーがオフサイドと判定されるケースについても説明されている。オフサイドポジションにいる攻撃側の選手が「相手のプレーする可能性を妨害した」場合は、たとえボールに触れていなくてもオフサイドになるという点だ。
【オフサイドにならないケース】
- クリアしようとしたボールがそのまま相手に渡った。
- パスをブロックするため伸ばした足に当たったボールが相手に渡った。
- 競り合いでヘディングしたボールが相手に渡った。
【オフサイドになるケース】
- シュートしたボールが立っていた選手に当たり、そのまま相手に渡った。
- 味方がシュートした際に、GKの視界や動きを妨げる位置に立っていた。
これらのジャッジは、攻撃側の選手がオフサイドポジションにいたことで、利益を得たかどうかがポイント。前者は利益を得たとは見なされず、逆に後者は利益を得たと判断される。
副審が気をつけるべきオフサイドのジャッジ
オフサイドのジャッジでは、副審が重要な役割を担っているということは言うまでもない。最終的な判定は主審が行うが、オフサイドがあったかどうかの正しい判断は副審の視点がより重要になる。
ボールを受けた選手のポジションだけでオフサイドの判断をしてはならない。その前のプレーがどうだったのかをしっかりと見極めてから、フラッグを上げることが大切だ。
レフェリングスタンダードにおけるオフサイドの部分について説明してきた。オフサイドポジションにいた選手に対して、フラッグを上げるかどうかを判断する際、注意すべき点は以下の通りです。
- パスを受ける直前にそのボールに守備側の選手が触れていた場合、それは意図的なプレーだったか?
- ボールに触れていなくても相手を妨害していないか?
オフサイドの判定も進化していきます。とても神経を使ってジャッジすることが多いですが、広い視野と冷静な状況判断で、適切なフラッグアップをしよう。