審判のジャッジにおいて、わかりやすいようで実はそうではないのがハンドの反則です。手でボールを扱ったら反則。このことはサッカーに詳しくない人でも容易に理解できるかと思います。
しかしながら、ハンドはそんなに簡単にジャッジできるものではないのです。サッカーの審判をやっている人なら、よくわかるのではないでしょうか。それが昨シーズンから今シーズン(2019-20)にかけてのルール改正で、競技規則の中で明確されることととなりました。
ハンドはどのように手や腕に当たったかで見極める
ハンドは長年にわたり議論され続けてきた反則です。手に当たったとしてもそれが意図的か否か、つまりわざとやったのか?という基準が具体的になりました。さらに、今年4月に出されたルール改正の通達により、2020/21競技規則からはより明確になっています。
“意図なく”ボールが手に当たったときに“反則とする”(反則としないのか)場合のガイドラインがより明確になって、より明瞭で一貫性あるものとなった。”
引用元:日本サッカー協会『競技規則改正 2019/20(主な改正と明確化の概要)』
意図的に手や腕でボールを動かすことは反則であるという点については、ルール改正前も明記されてはいました。サッカーでは、ボールを手で扱うことは原則として認められません。たとえそれが意図的ではなくてもです。
ところが、何をもってハンドと判定するのかについては、具体的な記載はありませんでした。それがこの改正により、具体的に明記されるようになりました。以下のハンドは反則となります。
- 明らかに自ら手や腕でボールに触った(意図的)
- 手や腕に当たったボールが直接得点になった(意図的・偶発的)
- 手や腕に当たったボールを自チームが保持して得点した、またはチャンスになった(意図的・偶発的)
これらに当てはまらない場合は、ハンドとは判定されません。たとえばスライディングなどで地面に倒れた際に、体を支えるために地面に置いた手や腕にボールが当たっても、ハンドにはなりません。自然な状態と判断できるからです。
では、同様のケースで手や腕を肩より高い位置に上がっていたらどうでしょうか。スライディングが行われた一連のプレーから判断する必要はありますが、多くの場合は不自然と判断されるかと思います。その状態で手や腕にボールが当たったとしたら、それは意図的と見なされるのです。
どこまでが腕?さらに明確化されたハンドの基準
2019/20競技規則からハンドの基準が一貫性あるものとなりました。2020/21競技規則では、前回からバージョンアップされたといえる改正が行われています。それらを説明する文章がより明確にされたと同時に、どこを腕と判断するのかが、図で明示さるようになったのです。
日本サッカー協会によると、”「腕」は脇の下の範囲の一番奥の場所までと定義づけられた(手を下げた場合、脇の下の最も上に位置するところまで)”と解説しています。これにより、ハンドとするかどうかジャッジする際に、当たった場所が腕なのかどうかを判断する基準が明確となったのです。
昨シーズンから行われたハンドのルール改正は、審判にとってジャッジの明確化が図られただけでなく、選手のプレーにも大きな影響を与えました。これまでは審判の主観と見られてしまうことが多かったハンドのジャッジ。ルール改正で以降は、どこに当たったらハンドになるのか、誰の目にも明らかになるようになりました。
意図せずとも手や腕がボールに触れるとハンドになる可能性が高くなったことから、ヘディングの競り合いやスライディングの際に、手や腕を不自然に高く上げないようにすることが求められることになったのです。
オフサイドは相手のハンドがあればオンサイドになる!?
さらに2020/21競技規則では、ハンドに関連するルール改正がありました。オフサイドのシーンでハンドが行われた場合のジャッジについてです。
まずはオフサイドポジションにいる攻撃側選手にボールが渡る直前に、守備側選手がそのボールに触っていた場合はオフサイドになるかどうかを理解する必要があります。この場合、守備側選手のプレーが意図的に行われたものであれば、オフサイドにはなりません。
今回の改正では、それがハンドと判断されるプレーであったとしても、アドバンテージが適用されたときはそのままプレーを続行させる(ハンドの反則は取らない)ことが明示されました。審判はハンドがあった瞬間で判断するのではなく、その後のプレーにも目を配ってジャッジすることが必要です。
昨シーズンから今シーズンにかけて行われた、ハンドに関するルール改正について解説してきました。審判にも選手にも大きな変化を与えたものであることが、お分かりいただけましたでしょうか。明確化されたハンドの基準は、審判のジャッジをやりやすくしました。選手へも明瞭な説明が可能です。それだけにしっかりと今回のルール改正を理解しておかなければなりません。