【サッカーハンドルールの改訂】”ハンド”が新しくなる。

 2020-21シーズン適用の競技規則に改訂がなされた。前年の2019-20シーズンでも競技規則の改訂があったが、大きな注目を集めてたのが「ハンド」に関するルールだ。ハンドのルールに関しては、今までも不明瞭な点や明確化を求める項目もあり、今回の改訂となった。

これまでのハンドルール

 ハンドのルールは「手や腕でゴールを決めることを認めない」を前提とした上で、意図的なハンドでなければ、反則として扱われることはなかった。しかし、そのプレーが意図的であるか否かの判断は非常に難しく、最終的にはレフリーの判断となってしまうため、不明瞭な部分が多く、様々な物議を醸してきた。

 そこで国際サッカー評議会(IFAB)は、2019-20シーズンから適用の競技規則を改訂し、その中にハンドについての変更も含めたのである。

 それまで「手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為」をハンドとしてきたのに対して、この時の改訂ではこの項目を削除。具体的なケースを挙げ不明瞭な点を改訂するという形になっていた。

【ハンドになるケース】

  • 手、腕による得点は偶発的でも無効
  • 選手が手や腕でボールを保持、コントロールして大きなチャンスになった場合(得点、得点機会)はハンドとなる。
  • 肩の高さを超えた手や腕は不自然であり、スライディングなどを含めて体を大きく見せてはいけない。仮に手や腕にボールが接触した場合はハンドとなる。

【ハンドにならないケース】

  • 選手が倒れたとき、体を支えるために腕を体とピッチの間におくのは自然なことなので手や腕に当たってもハンドではない(倒れるとはスライディングなどのこと)
  • 選手や近くにいる他の選手からボールが手や腕に落下した場合、ボールとの接触を避けられないことが多いのでハンドではない

 サッカー上級者でなくてもわかりやすく解説されており、把握しやすくなっている。

 ここまでが2019-20シーズン適用となったハンドルールだ。このハンドルールを基本としながら、2020-21シーズン適用の競技規則が一部改訂された。

更に明確化されたハンドルール

 IFBA公式サイトに掲載した2020-21シーズンに適用されるハンドルールを解説したい。2019-20シーズン適用の反則行為である「手、腕でボールを保持、コントロールした直後に、相手ゴールに入るもしくは得点機会を作る」に関して、ルールの改訂が行われた。理由としては、「直後」という文言の不明瞭さがあったからだ。以前の「意図的なハンド」と同様に明確な基準がなく、レフリーの判断となることがあり、このルールを導入した2019-20シーズンではVARを用いた判断で、ゴールが取り消されるといった事象が多発した。そのため、サッカー関係者からは基準の明確化を訴える声が挙がっていた。

 そこで今回の改訂では「直後」の基準が明確に示されることとなった。

  • ボールが意図的ではなくても、攻撃側選手の手や腕に当たり、他の攻撃側選手にボールが渡り、すぐに攻撃側チームの得点となった場合はハンドとなる
  • ボールが意図的でなく攻撃側選手の手や腕に当たり、ボールがパスやドリブルで一定の距離を移動したり、複数回パス交換がされた場合にはハンドにならない。

 ハンドがあったとしても、そのあと複数のプレーが行われるか、ボールが一定の距離を移動したかがハンドと判断するか否かの基準となった。これが認められれば、ハンド後に得点をしたとしてもその結果に影響ない。

ゴールキーパーのハンドに罰則

 ゴールキーパーは唯一手を使うことができるポジションである。しかし、場合によってはハンドとなることもある。例えば、味方からのバックパスを受けたときに手を使えばハンドとなる(バックパスをした味方選手がヘディングでパスをした場合を除く)。また、GKがゴールキックやフリーキックを行ったあと、敵味方に関わらず他の選手がボールに触れる前に、再度GKがボールに触れる場合も反則だ。

 GKがペナルティエリア内でハンドをした場合、間接フリーキックのみで、カードは提示されないこととされていた。しかし、このようなケースでは相手チームのチャンスケースであることが多く、警告(カード)とならないことは不公平だという批判があり、今回の改訂に至った。今回の改訂では、GKがエリア内でハンドをした場合「相手チームの攻撃チャンスを妨害した場合」「相手チームの得点や得点の機会を阻止した場合」にカードが提示されることとなった。

 例えば、GKから味方にパスを出した時、パスが短くなってしまい、相手選手に取られそうになったときにもう一度このボールに触れれば反則ということである。これが手や腕でも同様の警告となる。これが相手の得点機会の阻止など状況によっては、退場となる場合もある。

ハンドはどこまでが肩?腕?

 これまでハンドの判断を下す時に、どこまでが肩であるのか?どこからが腕なのか?明確な基準がなく幾度となく、試合の行方を左右する判断が下されてきた。また、近年VARが導入され、さらに大きな問題となっていた。そこで今回の改訂では、明瞭に境界線が提示された。

 脇の一番奥を腕の付け根とし、そこから腕の外側に線を引き、その線より上を「肩」と定義。肩に当たった場合は、ハンドではなく、その線より下の腕の部分に当たった場合にはハンドとなるようになった。この基準を欧州メディアでは【Tシャツ基準】とも呼ぶこともある。実際のTシャツとは異なるが、新ルールの愛称といったところで、第三者にはわかりやすいものとなるかもしれない。

【最新ハンドルールまとめ】

  • ボールが意図的ではなくても、攻撃側選手の手や腕に当たり、他の攻撃側選手にボールが渡り、すぐに攻撃側チームの得点となった場合はハンドとなる
  • ボールが意図的でなく攻撃側選手の手や腕に当たり、ボールがパスやドリブルで一定の距離を移動したり、複数回パス交換がされた場合にはハンドにならない。
  • GKがエリア内でハンドをした場合「相手チームの攻撃チャンスを妨害した場合」「相手チームの得点や得点の機会を阻止した場合」にカードが提示される
  • ゴールキックを蹴った直後に二回目のキックで相手のチャンスを妨害した場合でもカードが提示されることになる。(手に限らず足などで触れても妨害となる)
  • Tシャツ基準の誕生。脇の付け根から外側に線を引き線より上を肩、線より下を腕としてハンドの判断を行う。