【最新サッカールール】より詳しくVARを知ろう。

VARについて、世界で導入に至った経緯を中心に説明しました。今回は以前の内容をより深く、詳しく解説していきます。

今回は、2018年ロシアW杯を中心に見ていきましょう。

(以前記事:https://soccer-shinpan.com/navi/offside8/?preview_id=27&preview_nonce=cdf59e423f&_thumbnail_id=140&preview=true

 

ピッチ上にカメラは何台あるのか?

 VARは「判定の間違いをなくす」ために、起きた事象を詳しくチェックする必要があります。数秒前のプレーの事象を確認するために、スタジアムには多くのカメラが設置されています。

 ロシアW杯では、各会場に「33台」のカメラが設置されていました。33台の内、8台がスーパースローモーションカメラ、4台が超スーパースローモーションカメラになっています。ゴールシーンで物議を醸し出すことが多い、オフサイドか否かを判定する専用のカメラがそれぞれのサイドライン側に、1台ずつの合計2台置かれています。

 FIFAの規程では、VARを用いる際には最低「4台」のカメラがあれば良いと発表されています。内訳は、中央に設置する広範囲カメラと狭範囲カメラの2台。あとの2台は、オフサイドを判定するためのカメラとなっています。Jリーグでは、VARが使用されるときは「12台」のカメラが設置されています。

 

VARはどこで映像を見ているのか

 VARカメラが映した映像は「Video Operation Room (VOR)」で、VARチームによって視聴されます。VORを設置するにも規則があり、試合が行われているスタジアムの中か、もしくはスタジアムの近くのコンテナや車の中等と指定されています。ロシアW杯では、全ての試合会場の映像はモスクワにある国際放送センター(IBC)にて視聴されていました。

 

VARチームは何人いるの?

 テレビで試合観戦している時に、稀にVOR内の映像が映し出されることがあります。VOR内では、何人でモニター映像をチェックしているか気になったことはありませんか?

 ロシアW杯では、VARチームは「VAR(Video Assistant Referee)」1名と、そのアシスタントである3人の「AVAR(Assistant Video Assistant Referee)」の、合計4人で構成されています。

 また、4人のリプレイ担当者がVOR内で一緒に仕事をしています。Jリーグの場合はVAR1名、AVAR1名、リプレイ担当1名の計3名が1チームとして1試合を担当します。今回はロシアW杯の例を用いて説明していきましょう。

 VARは、中継映像が流れるメインの上部のモニターを見ながら、3秒遅れで流れる下部の3分割されたモニターで異なるアングルから事象をチェックしていきます。リーダーとしてVARチームを率いる役割と、ピッチ上の審判と連絡を取り合う役割があります。

 AVAR1は、VARと同じく中継映像を見ていきます。

 もし、VARが事象がチェックしてる時はVARにいまピッチ上で行われている現象を伝えながらVARの役割を担当します。AVAR2はオフサイドにまつわる役割を担当します。オフサイドになりそうなプレーを予測、確認しながらVARがスムーズにチェックできるようにします。AVAR3はTVで流れている映像を担当し、VARの事象のチェックを手助けしながら、VARがオフサイド担当のAVAR2とのコミュニケーションが円滑に取られているか確かめます。

 先ほど記述したように、VOR内にはVARチームとは別に4名のリプレイ担当がVARチームの手助けをしています。

 2人は必要となるだろうという映像を選択して、もう2人はVARとAVAR2によって選択された映像を提供していきます。

 ロシアW杯では、13名がのVAR専任として大会に選出されました。その選考基準は、各大陸や各大会での実績や過去に行われたいくつかのFIFAのセミナーに参加して知識があることが必須とされています。

 

VORに必要な設備は?

 公平に素早く、正確に事象を解析するためにVORにはいくつか必要とされる機器があります。1つめはモニターです。VARの前には2つのモニターが設置されています。上部にあるモニターで中継映像を表示しています。下部のモニターでは4分割された画面で事象を異なる角度から同時に確認できるようになっています。その映像はリプレイ担当が選択肢して表示させています。また、それらの映像は上部のモニターより3秒遅れで表示されるようになっています。AVARにはVARとは同じく、中継映像が表示されるモニターが必要になります。リプレイ担当の前にもモニターがありますが、これは様々な角度の映像を表示させており、1画面最大で12分割まで表示することができます。13分割以上は2人目のリプレイ担当が必要になってきます。なお2人目のリプレイ担当に最大分割画面の制限はありません。

 2つめは画面に印をつけるために必要なデバイスです。確認したいことをマークすることでリプレイ担当に必要な映像を伝えることができます。このボタンを押すタイミングは一方のチームが攻撃を始めた時に押されます。このことによって、何か事象が起きた時にどこまで遡れば良いかわかりやすくするためです。

 3つめはマイク付きのヘッドフォンです。各VARとAVARの前にはボタンがあり、ピッチ上の審判たちとコミュニケーションを取る時にはこのボタンを押します。リプレイ担当もヘッドフォンをつけていますが、ピッチ上の審判とコミュニケーションをとる事が許されていないので、同じVOR内にいるVARとAVARのために使用します。また、ピッチ上にいる主審と副審のマイクは常にオンになっているため、彼らの会話はVOR内にいる全てのVAR、AVAR、リプレイ担当が聞いていることになります。以下の画像がそれぞれの役割に与えられた権限になります。

 

 最後に必要な機器はVOR内を映すカメラになります。公平な判断がされているかという観点から設置がされていると推測できます。テレビで試合を観戦していてVOR内の映像を見た事があるかと思います。

 以上のようにVOR内にはいくつかの機器が必要となります。例えば、リーグ戦で導入するには年間約1億円のコストがかかるとされています。そこからさらに審判の派遣だったり、VARを正しく扱うためのセミナーなどでより多くのコストがかかってきます。

 

 今回、説明した以外にも多くの規則があるVAR。導入から数年経ちますが、素早く正確に機器を扱うことができる高度な人材面の必要性や多額なコストがかかることがわかりました。サッカーの歴史の中で新しい取り組みのVARはまだまだ発展途上であり、運営側や選手、サポートなど多くの協力が必要になってくるはずです。