【最新サッカールール】VARって何?

VARって何?

近年、VARが導入されサッカー観戦中に試合が中断するシーンが多く見られるようになりました。VARの正しい知識と、日本を含め世界でどのような動きが起きているのか確認していきましょう。

 

VARの基礎知識

VARとは「VideoAssistantReferee(ビデオアシスタントレフェリー)」の略語になります。簡単に言えばビデオ判定で、モニターが設置された別部屋からフィールドにいる主審・副審をサポートする審判員のことを指します。

他スポーツで言えば、テニスやバレーボールの「チャレンジ」、野球の「リクエスト」にあたります。全てのカテゴリーの試合で利用されるのではなく、国際サッカー評議会(IFAB)の承認を受けた組織、スタジアム、審判員でなければVARは導入できません。VARはあくまでもフィールドにいる審判のサポート役なので「全ての事象に介入」するのではなく、「はっきりとした明白な間違いをなくす」ことが大切であるとされています。

VARが使われる事象は以下4点と、主審が確認できなかった事象になります。

  • 得点かどうか
  • PKかどうか
  • 退場かどうか
  • 警告退場の人間違い

主審が確認できなかった事象とは、主審からは全く見えないところで相手を蹴った、ペナルティーエリア内で手を使ったなどのことです。

試合中にVARチェックを行う時は大きく4つの動きで流れます。

  1. 対象となる事象、対象となり得る事象が起きたらVARルームで「チェックしている」ことを無線で主審に伝える(この時に試合は中断します)
  2. VARがチェックを終えて、事象に問題がなかったらそのまま試合再開。もし再考が必要ならば主審に提案します。
  3. 主審は、VARからの助言を聞くか、主審自らがモニターを見直して確認するか、どちらかを用いて再考します。
  4. 確認後、主審が再判断をしてその判断を選手やスタジアムに伝えます。

繰り返しになりますが、VARは主審をサポートするのが役目であり、最終判断は主審が下します。

 

VARの始まりは?

VAR導入の背景には、主審の判定について「なぜサッカーだけリプレイがないのか」、「なぜ観客や監督たちはリプレイを見れるのに審判だけ見れないのか」等の議論が幾度も繰り返されてきた背景があります。

そして、2016年からアメリカやオランダリーグで試験的にVARが導入されてきました。2016年のクラブW杯では、鹿島アントラーズがFIFA(国際サッカー連盟)主催の大会で、史上初めてVAR判定でPKを獲得したという事例もあります。

その後世界各地で試験的に導入が進み、2018年のロシアW杯で全試合に導入され、これまでのサッカー観戦とは少し違う大会となりました。

日本のVAR事情

VARは、2018年ロシアW杯を機に世界的にも本格導入され、遅れて1年を経て日本に導入されました。2019年9月4日のルヴァンカップ準々決勝第1戦で初めて使用され、早くもVARによってゴールが取り消され話題を呼びました。同大会決勝でも、最初は相手選手を倒したことによってイエローカードが提示されましたが、そのファウルがレッドカードの対象となり得ると判断され、イエローカードが取り消されレッドカードが提示されました。この時の一部始終はネットでも議論を呼び、動画配信サイトでは50万回以上再生された程です。

Jリーグでは、2021年からの本格導入が決定していて、2020年からはJ1リーグの全試合とルヴァンカップ等で導入されることが決定しました。2020年シーズン第1節の川崎フロンターレ対サガン鳥栖では、J1初のゴール判定取り消しが行われました。残念ながら、第1節以降は新型コロナウイルスの影響でリーグが中断され、再開後も過密日程のため審判団の確保の難しさやモニター室が感染拡大の恐れになる得る等を考慮し、2020年のJ1リーグとルヴァンカップでの導入は見送られることとなりました。

VARが導入された結果、導入以前から危惧されていた「試合が何度も中断される」、「それでも誤審はある」、「得点後に素直に喜べない」など否定的な意見も出てきました。

しかし、国際サッカー評議会はVARを用いた試合での誤審率は1.1%で、用いなかった試合では7%にもなるというデータを発表されました。また、審判が映像を確認して試合が中断することに対しては、試合時間のわずか1%であり、セットプレーで試合が止まる時間は試合時間の28%にも及ぶといいます。VARで反則の確認ができることになり、選手や監督からの抗議の回数が減ったり、悪質な反則が減ることで試合がスムーズに進行するという側面もあります。

メリットやデメリットを持ちながらも、VARを導入をきっかけにサッカーは日々進化していくのでしょう。